世界一周サイクリスト
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仕事での多くの出会いが、私の日々の活力になっている。
昨年、インタビュー記事の取材でお会いした待井剛さんは、かつて驚くべき偉業を成し遂げられた方だが、それだけではなくその生き方において、とても輝いたものをお持ちの素敵な方だった。
彼は1992年から1998年まで、実に6年かけて世界117カ国を自転車で走破し、世界一周を果たした人物である。
世界訪問国数117カ国は日本人サイクリストとしては最多記録であり、この記録は未だ破られていない。
高校時代に世界一周の夢を抱き、夢実現への挑戦を『絶対成功人生プラン』として1枚のメモに書き綴った。
卒業後、大阪の運送会社に勤め、その資金で日本一周。
次は世界一周を目標に、3年間佐川急便で働き、1千万の旅行資金を貯めて旅立った。
北米から南米、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジア、オセアニア、最後の韓国まで、走行した距離は地球約3周分の11万6千キロを超える。
厳しい自然と向き合いながら続けた旅はその行程のほとんどが野宿というまさにサバイバルの旅。
美しい風景、厳しい自然、環境破壊の進む大地、途上国の貧困や飢餓、言葉の壁、そして一方で出会った人々のあたたかさ。
彼が見てきた一言で言い表せない世界を、訥々と語ってくれた。
長い6年にも及ぶ旅はきっといいことばかりではなかったはずだ。
ノルウェーでは盗難、カメルーンでは強盗に会い、ニジェールでは病に倒れアフリカに負けたと悔し涙を流したこともあったという。
強盗にあったカメルーンでは明日の糧にも事欠くストリートチルドレンが絶望する彼に食べ物を持ってきてくれた。
こうした多くの出会いがあればこそ、ペダルを踏み続けることが出来たのだろう。
最後に聞いてみた。
「物質的には恵まれていて何不自由ない時代に生きているけれど、私たちは必ずしも生き易いとは言えない環境にありますね。いじめや自殺、引きこもりやニート・・・この時代、夢を持って生きなさいなんて言われても、将来何がしたいのかわからない、今をどう生きていいのかさえわからないという若者が大勢います。そんな人たちにアドバイスというか、メッセージをいただけませんか?」
「そんな大きなことは言えないけれど・・・叶えたい夢が見つからなくても、一度は親元を離れて旅に出てみて欲しい。それほど遠くじゃなくてもいいから、今生きている現実から離れて外に出てみるといいんじゃないかな。そうすると、気づかなかったことに気づいたり、見えなかったものが見えてくると思う。わかりやすく言うとね、アフリカの貧困や飢餓はテレビや新聞で見て、なんとなく知っているわけだけど、本当の飢餓がどういうものかはアフリカに行ってみなければ多分わからない。一度アフリカに行くと、心底食べることの出来るありがたみを感じて、もう残したりするなんてことは出来なくなっちゃうんですよ。そんな実感の伴う体験をして欲しい。それと、人との出会いもね・・・たくさんの人に支えられて自分が生きているんだってことがわかってくるよ。可能性を信じて、『今』というこのときは二度とやってこないんだから。やらずに後悔するより、やってから後悔したほうがいい、絶対そう思う。」
素顔の待井さんは、世界一周を成し遂げたという気負いなど微塵もない、恥ずかしがり屋の少年のような一面を時折のぞかせる、とても純粋で誠実な方だった。
夢への情熱と強靭な意志の力で、夢を実現させた有言実行の人。
もう一度自分の生き方を考えてみようと思った出会いである。
「出会いが宝」とおっしゃる待井さん、私にはあなたとの出会いが宝になりました。
ありがとう。
待井 剛氏 :長野県諏訪市出身。兄は元リレハンメルオリンピックエアリアル選手の待井 寛氏。自己資金のみで自転車による世界一周を達成。帰国後、ジャパンアドベンチャーサイクリストクラブより、第3回地球体験ペダリアン大賞受賞。現在、兵庫県三木市の老舗和菓子店『明月堂』副社長として、また和菓子職人として手腕を振るう。多忙な仕事のかたわらライフワークとして続ける講演活動は110回を超え、地球人としての視野を持つことや夢を追うことの素晴らしさを語っている。
待井さんのHP 『自転車世界一周 出会いが宝』
待井さんの数々の写真の中で一番印象に残った写真。
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