今日、久しぶりに友人のAちゃんに会った。
Aちゃんは今年1年生になったばかりの男の子のお母さんだ。
入学してどう?順調?
何気なく私が聞いたらAちゃんは少しだけ困った顔をした。
「それがね、全然順調じゃないの・・・もう学校から毎日電話はあるし、家庭訪問もまだなのに、先生、何度もうちに来てくれてるの・・・」
Aちゃんの子はいわゆるLD(学習障害)児だ。
「入学早々、同じ女の子を三回も殴ったらしくて。授業もほとんど聞けてなくて、ウロウロしたりほかの子にちょっかい出したり・・・殴られた女の子のお母さんから学校に苦情の電話が入ってね。ものすごく大変なことになって。学童でも同じでね。迎えにいく度に先生から“今日は誰々に蹴りを入れました、誰々を叩いて泣かしました”って言われるし。“お母さん、家でどういう風に子どもさんと接しておられるんですか?”なんて聞かれるし。私も気になって子どもに付き添って学校に行きたいくらいなんだけど、仕事をしない訳にもいかなくて。」
29歳のAちゃんは実はシングルマザーだ。
夫がある日突然数百万の借金を残したまま蒸発し、小さな子どもを抱えて誰にも頼らず、数年かかってコツコツと夫の借金を完済した苦労人なのだ。
初めてその話を聞いたとき、困惑して言葉を返せないでいる私に、「そんなヤツと見抜けず結婚した私が一番アホなのよ。」と彼女は笑いながら言った。
言葉からも判るとおり、彼女はそんな苦労をまるで感じさせないくらい明るくさばさばした性格のとても魅力的な女性だ。
若いんだからまだまだこれから、いい出会いがきっとあるよ、という私に、それでも決まって彼女は言う。
「もう結婚はこりごり。子どもと二人でいるほうが楽でいいわ。」
いつも明るいAちゃんが愚痴をこぼすことはめったにない。
住んでる市が違う私にはAちゃんの子と接する機会はまずないから、LD児であると言うことは彼女が話さなければ私は知るすべをもたない。
でも、彼女は普通の人ならできれば隠しておきたいと思うようなマイナス面のことでも、いつも包み隠さず明るく私に話す。
多分、私以外の人にも彼女はそうなのだろう。
そんな彼女がめったに吐かない愚痴をこぼした。
「うちの子が殴った相手のお母さんに謝ろうと電話したとき、色々言われたのが一番キツかった。」
なんで?その人、Aちゃんの子がLDだってこと知ってて言ってるの?
「うん。“LDだってことは先生から聞いたけど、そんなに乱暴な子はなんとかしてもらわなきゃ困る。うちの子は殴られ損だ”って、ものすごく怒ってた。“クラスにそういう子がいるってことを他のお母さんから聞いてました”とも言ってたから、うちの子は多分クラスの保護者の中でも噂になってるんよ、きっと。」
同じ子を持つ親でありながら、なんでそんなひどいことが言えるのか。
Aちゃんの子がLDなのはAちゃんのせいではないし、Aちゃんの子育てが悪いわけでもない。
Aちゃんにそんなことを言ったヤツがもし私の目の前にいたとしたら、私はそいつの胸倉つかんで、「あんたの子がもしLDでも、あんたはAちゃんに同じこと言えるのか!!!」って叫んで唾を吐いてやる。
「さすがに今回だけは、こういうこと言うと泣きそうになるからあまり誰にも言ってないんだけどね。とにかく今は仕事も出来るだけ早めに切り上げて帰るようにしてるんだ。」
そういう彼女に私は長男が1年生だった時のことを話した。
うちの子もね、1年生の時はそりゃひどかったよ。“お宅の子どもさん、危険区域に入って棒切れ振り回してますよ”とか“蹴ってた石が危うく駐車してある車にあたるとこだったわよ”なんて電話がしょっちゅうだったし、下校中に友達と喧嘩して、“死ね!”と言って友達を追い掛け回したりして、その子のお母さんから電話があって、長男連れて謝りに行ったこともあるよ。
「そうなんだ!私だけじゃないのね!」
うん。入学したての時期は親も子も緊張してるから、ちょっとしたことに過敏になるもんよ。私も心配で、よく下校時間にこっそり長男の後をつけたりしたよ。大丈夫、少し慣れてきたらまたきっと変わってくるから。長い目で見てあげてよ。私も長男のことでさんざん謝り倒してきたから!1年生だった長男が5年生に殴られて歯を折られかけて、学校から電話があったとき、私が思ったこと想像できる?長男には悪いけど、私その時“あ、殴ったのが長男でなくて良かった!怪我させられたほうで良かった!”って、私、心底その時そう思ったのよ。
「あ、わかる!それものすごくわかる。自分の子がやられたって聞くと安心するの。やられた方なら謝らなくてすむからね~」
そうそう、そうなのよ。
「なんか、元気でた。話してよかった。」とそういって彼女は帰って行った。
彼女が帰ってから一人になって、なんだか虚しさが溢れてきた。
多分私の言葉はAちゃんにとっては何のなぐさめにもならなかったはずだ。
なぜなら、うちの長男がいかに問題児であろうとも、私がいかに長男に苦労させられていようとも、うちの長男とAちゃんの子は根本的に違うのだから。
そんなことは十分承知の上で、彼女は言ったに違いない。
「元気出たよ!みいちゃんと話せてよかった。ありがとう。」と。
多分、それはAちゃんの強さであり、優しさなのだろう。
最初から私もAちゃんもわかっていることだ。
私がAちゃんにあげられるなぐさめの言葉など、どこにもないのだ。
まだ若いAちゃんにどこまでも過酷な人生を背負わせる(神という存在があるのかどうかわからないが、もし存在するのなら)神や運命を私は腹立たしく思う。
そして、彼女をほんの少し楽にしてあげられる魔法の言葉がたったひとつでもあればいいのにと、有り得るはずもないことをいつまでも願い続けてしまうのだ。
記事更新をお休みするといっておきながら、どうしてもこのことは書かずにはおれず、したためてしまいました。
2日目にして、早くも禁を解いてしまった私に、お叱り、ご意見あらば、何なりとお寄せ下さい。
また、本日より1週間のお休みとさせていただきますことをあらためてお知らせします。
「人気ブログランキング」 ←現在、エッセイランキングにエントリー中。あなたのクリックで順位が上がります。応援してね!あなたの1票待ってま〜す!
最近のコメント